『ミックスデリバリー』

あたしの耳に救急車のサイレンの音が聞こえて来たとき
あなたの部屋にはグレープフルーツの匂いが満ちていたのに違いない

あたしの胸をツンとした痛みが素早く通り抜けたとき
あなたはきっとテレビを見ながら煙草を吸っていたのに違いない

ローズヒップのまあるい飴はあたしの舌を麻痺させて
日に日にろれつが危うくなるのは
あたしのせいじゃないでしょう?

空はいつでも心地よく晴れていて流れてゆく雲はどれも柔らかい
春めいた空気に抱きしめられながら歩くあたしは
もうすぐにあなたのことなんて忘れてしまうよ

あたしの声が失われたとき
あなたの瞼にはあたしの笑顔が浮かんでいたのに違いない

あなたの右手があたしに差し伸べられるとき
あたしはきっと全てを愛しているのに違いない

Exit